AWSを活用する企業が拡大するにつれ、複数の事業部門・開発チーム・本番環境を単一アカウントで管理することの限界が明らかになってきます。本記事では、AWS Organizations を活用したマルチアカウント構成の設計指針と、実務での注意点をお伝えします。
なぜマルチアカウント構成が必要か
単一AWSアカウントで複数の事業部門やシステムを運用していると、以下のような課題が生じます。
- 本番環境と開発環境のリソースが混在し、誤操作のリスクが高まる
- 部門ごとのコスト管理・請求分離が困難になる
- セキュリティポリシーを細かく制御できない
- リソースクォータの競合が発生する
- コンプライアンス要件(金融・医療等)への対応が複雑になる
AWS Organizations は、こうした課題に対する公式の解答です。複数のAWSアカウントを階層的に管理し、一元的なポリシー制御・コスト管理・セキュリティガバナンスを実現します。
OU(Organizational Unit)の設計パターン
OU設計には主に「環境ベース」と「事業部門ベース」の2つのアプローチがあります。どちらを採用するかは、組織の構造と管理方針によって異なります。
環境ベース設計
本番(Production)・ステージング(Staging)・開発(Development)・サンドボックス(Sandbox)という環境ごとにOUを分割するアプローチです。環境間の制御を強化しやすく、SCPによるガードレールを環境単位で設定できます。比較的シンプルな組織構造の企業に適しています。
事業部門ベース設計
事業部門やプロダクトチームごとにOUを分割し、その配下に各環境のアカウントを配置するアプローチです。部門ごとの自律性を高めつつ、組織全体のガバナンスを維持できます。複数の独立した事業を持つ大企業に適しています。
SCP(Service Control Policy)の活用
SCPはOrganizations の最も強力な機能の一つです。特定のサービスや操作を組織全体・OU単位・アカウント単位で制限することができます。代表的なSCPの用途を以下に示します。
- 特定のAWSリージョンのみ許可(データ主権・コンプライアンス対応)
- RootユーザーによるIAMポリシー変更の禁止
- CloudTrailの無効化禁止
- 特定のインスタンスタイプのみ許可(コスト制御)
- GuardDuty・Security Hubの無効化禁止
AWS Control Tower の活用
AWS Control Tower は、マルチアカウント環境のランディングゾーンを自動構築するサービスです。Organizations・AWS SSO・CloudTrail・AWS Config・Security Hub等を組み合わせたベストプラクティス構成を、数クリックで整備できます。
ただし、既存のOrganizations構成がある場合は段階的な移行が必要であり、カスタマイズの自由度もある程度制限されます。新規で大規模な環境を構築する際に特に有効です。
アカウント払い出しの自動化
マルチアカウント環境が成熟すると、新しいアカウントの払い出し(プロビジョニング)を自動化することが重要になります。Account Vending Machine(AVM)パターンと呼ばれるこのアプローチでは、Terraform や AWS Service Catalog を使って、標準化されたアカウント設定を自動的に適用します。
まとめ
AWSマルチアカウント戦略は、設計段階での考慮が後々の運用コストを大きく左右します。OU構造・SCP・ログ集約・コスト配分の設計は、組織の現在の構造だけでなく、将来の成長も見据えて策定することが重要です。
KumoTech Solutions では、お客様の組織構造と要件に合わせたマルチアカウント設計のご支援を行っています。ご相談はお気軽にどうぞ。